もっと知る!その他の粘着剤の特長

このページでは、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤の特長と用途、利点・注意点を解説します。

  • ゴム系粘着剤
  • シリコーン系粘着剤
  • ウレタン系粘着剤の特長

ゴム系粘着剤

ゴム系粘着剤は、幅広い被着体に強力に貼りつく性質があり、さまざまな分野で活躍しています。私たちの身近なものの例としては、梱包テープやセロハンテープなどに使用されています。

ゴム系粘着剤

ゴム系粘着剤の特長

ゴム系粘着剤にはさまざまな種類がありますが、大きく天然ゴム系粘着剤と合成ゴム系粘着剤に分けられます。 ゴム単体では粘着特性が現れないため、物に貼りつくことができません。
粘着剤にするためには、粘着付与樹脂(タッキファイヤー)と呼ばれる樹脂の混合が必要です。 粘着付与樹脂には弾性率(かたさ)を下げる役割があり、ゴムを柔らかくすることができます。これにより粘着性能が発現し、さまざまなものに貼りつくことができます。

1.天然ゴム系粘着剤

天然ゴムは、ゴムの木から採取される樹液の成分(ラテックス)が原料です。天然ゴム系粘着剤は、このラテックスに粘着付与樹脂やゴムの老化を防ぐ老化防止剤を添加して作っています。

天然ゴム系粘着剤
特長

歴史的に最も古くから使用されている粘着剤です。
天然ゴムは、そのままの状態では非常にかたく、加工ができないため、素練りと呼ばれる作業が必要です。この工程で分子鎖を切断し、柔らかくすることによって、樹脂や添加剤を混ぜることができ、粘着性能を発現できます。
柔軟性や流動性(濡れ性)に優れ、被着体を選ばず使用できることが特長です。

主な用途

包装用テープ、電気絶縁用テープ、マスキングテープ、表面保護用テープ、両面テープ、クラフトテープなど

2.合成ゴム系粘着剤

合成ゴム系粘着剤とは、天然ゴム系粘着剤と異なり、人工的に合成したゴムを使用した粘着剤です。
合成ゴム系粘着剤の種類には、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリイソブチレンゴム(PIB)、スチレンイソプレンブロック(SIS)、スチレンブタジエンスチレンブロック(SBS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック(SEBS)、スチレンブロック(SBC)などがあります。

特長

合成ゴム系粘着剤の特長は、使用用途や目的に合わせて粘着剤のかたさや柔らかさの調整が可能なことです。粘着剤をかたくすることで耐久性を上げたり、柔らかくすることで被着体への濡れ性をよくできたりと、用途に合わせ、特性を調整することができます。
合成時の成分比率や粘着付与樹脂をはじめとする各種添加剤の配合量の調整をすることで、耐寒性、防水性、透明性、弾力性、制振性などの性能を出すことが可能です。
一部の合成ゴム系粘着剤は、ホットメルト型の粘着剤にすることもできます。ブロックコポリマーの粘着剤は、ドメインという物理架橋を形成し、凝集力が発現します。熱が加わるとドメインが崩れて流動性を持ち柔らかくなりますが、熱が取り除かれると再度ドメインを形成するためかたくなります。この特性を活かし、ホットメルト型としての使用が可能です。
合成ゴム系粘着剤はさまざまな特性を活かして多くの用途に使用されています。

主な用途

包装用テープ、表面保護用テープ、一般用ラベル、結束用テープなど

ゴム系粘着剤の利点・注意点

ゴム系粘着剤の利点・注意点は以下の通りです。

利点

  • 被着体の素材を選ばない
    さまざまな被着体に強い粘着力を発揮し、凹凸のある粗面などにも強く貼りつきます。貼りつくことが難しい、低表面エネルギー・低極性のポリプロピレン、ポリエチレンなどの材料にも使うことができるなど、被着体を選ばずに使用可能です。
  • 塗液調整および熟成期間が不要
    塗工前に硬化剤と混ぜる手間がありません。また、熟成(エージング)の時間が必要ないため、塗工後すぐに使用することができます。
  • 価格が安い
    ほかの種類の粘着剤と比較すると比較的安価なことが多いです。
  • 初期粘着力が強く、高タック
    ほかの種類の粘着剤と比較して、粘着力の立ち上がりが早いです。また、初期のべたつきも強い傾向があります。
  • 低温での粘着性が良い
    低温環境下でも流動性を保て、被着体に貼りつくことができるなど、耐寒性にも優れています。
  • 絶縁性に優れる
    ゴムは電気絶縁性が高いため、絶縁性能に優れており、感電事故予防の目的としても使用できます。

注意点

  • 粘着剤の耐久性が低い
    耐久性が低いため、長期間使用すると剥がれる場合があります。
  • 設計の幅が狭い
    粘着剤設計の調整余地が多くないため、希望通りの粘着剤の作成が難しい場合があります。
  • 日光に弱い
    紫外線の影響を受けやすいため、屋外で使用すると、粘着剤の劣化や色あせが起こりやすいです。
  • 環境によって性能が変化する
    湿度や温度などの環境によって性能が変化しやすいです。また、40〜70℃などの高温下では柔らかくなりやすい性質があるため、粘着力や凝集力が弱まる傾向があります。

高温環境下での使用や、屋外で使用する際など、耐久性が必要とされる場合には、アクリル系粘着剤の使用が推奨されます。

シリコーン系粘着剤

シリコーン系粘着剤は、高い耐熱性や耐候性、耐薬品性、耐水性が特徴的な粘着剤です。耐熱性だけでなく耐寒性にも優れ、使用可能な温度領域が広いため、さまざまな用途に使用されています。

シリコーン系粘着剤
シリコーン系粘着剤の特長

シリコーン系粘着剤は、シリコーンポリマーと、粘着付与成分のシリコーンレジンからなる粘着剤です。
シリコーンポリマーのみでは粘着力が低いため、シリコーンレジンを混合し、粘着性を調節しています。ポリマーとレジンの配合比率を変えたり、レジンの種類を変えたりすることで、粘着性能を調整することができます。
べたつきが少なく、流動性を持ち柔らかいこと、多くの被着体に貼りつくことが特徴の粘着剤なので、一般的にゴム系やアクリル系粘着剤が貼りつきにくいとされるシリコーンゴムやフッ素樹脂にも貼りつきます
電子機器などの保護フィルムに使用される微粘着タイプは、貼る際に気泡の巻き込みが少なく、エア抜け性に優れます。
使用可能な温度領域が広く、-60℃〜250℃程度の領域まで使用可能なことも特徴です。高温環境・低温環境でも粘着剤が溶けたり固まったりすることがなく、粘着力の変化が小さいため、熱がかかる用途や、低温下で貼りつける用途でも使用が可能です。シリコーン系粘着剤は、剥がす際に皮膚を引っ張る、体毛が抜けることが少ないなど、皮膚への刺激が少なく、剥がすときの痛みが少ないため、医療用粘着テープなどにも使用可能です。
ほかにも、耐水性、耐候性、耐油性、耐薬品性、絶縁性、防水性など、多くの特徴があり、これらを活かしてさまざまな用途に使用されています。

シリコーン系粘着剤の特徴

主な用途

保護用フィルム、防水テープ、防食テープ、医療用粘着テープ、耐熱用テープ、電気絶縁用テープなど

シリコーン系粘着剤の利点と注意点

シリコーン系粘着剤の利点・注意点は以下の通りです。

利点

  • 再剥離性が高い
    再剥離性が高く、貼り直してもべたつきや粘着力が変わりません。
  • 耐久性が高い
    耐熱性、耐寒性に優れるほか、紫外線や日光にも耐えられるなど耐候性にも優れます。過酷な気候条件でも物性に大きな影響を与えないため、屋外での使用も可能です。防食テープとして、配管の屋外露出部分や、配管同士をつなぐ部分などに使用され、金属の腐食を防止します。
  • 耐溶剤性・耐薬品性がある
    アルコールなどの極性有機化合物に侵されづらい性質があります。ベンゼンやトルエンなどの、無極性(低極性)化合物には膨潤しますが、溶剤を取り除くと元に戻ります。高温環境下(100℃以上)での耐油性にも優れています。

注意点

  • 価格が高い
    ほかの種類の粘着剤と比較すると、価格が高いです。
  • 粘着力が弱い
    一般的に粘着力が弱いため、被着体へ強く貼りつく必要がある場面への使用は難しいことが多いです。
  • シロキサンによる悪影響の可能性
    ガス化したシロキサンにより、電子部品における接点障害、光学部材における曇りの発生など、製品不良のリスクが懸念されます。また、半導体用のテープなど高温環境のある用途で使用した際にはウエハ表面を汚染する可能性があります。

強い粘着力が必要とされる場合、また価格性能比のバランスから、アクリル系粘着剤も選定候補の対象になります。

ウレタン系粘着剤の特長

ウレタン系粘着剤は、微粘着で再剥離性に優れた粘着剤です。ウレタン樹脂は汎用性が高く、幅広い用途で使用されており、接着剤用途もそのひとつです。また、樹脂そのものの持つ特徴を活かし、粘着剤にも使用されています。粘着剤としては、汎用性という観点で課題はありますが、新たな付加価値の付与やさまざまな用途への展開が期待されています。

ウレタン系粘着剤の特徴

ウレタン系粘着剤の特長

ウレタン系粘着剤は、ポリオールとポリイソシアネートからなる、ウレタン基を含む粘着剤です。凝集力の高いハードセグメントと凝集力の低いソフトセグメントで構成されており、これらを調整することによって、粘着力や保持力などさまざまな物性を発現、制御できます。ウレタン系粘着剤に含まれるウレタン基は高凝集力のため、微粘着で再剥離性に優れています。そのほか、極性が高いため透湿性に優れる、弾性率の温度・周波数依存が小さいため安定した特性が発現できる、低臭気・低皮膚刺激などの特徴があり、医療用テープへの展開が進んでいます。
一方で、硬さや分子量のコントロールに工夫が必要で、幅広い用途に対して実用的な粘着物性を発現することが難しいという側面があります。課題解決に向けて、鎖延長や可塑化成分の導入により、設計自由度に広がりをもたせ、粘着物性を向上させるための検討が進められています。ゴム系やアクリル系の粘着剤にはない特徴があるため、新たな付加価値を持った粘着剤を提供できる可能性があります。

主な用途

保護用フィルム、医療用粘着テープ、工程保護用粘着テープなど

ウレタン系粘着剤の利点と注意点

ウレタン系粘着剤の利点・注意点は以下の通りです。

利点

  • 再剥離性に優れる
    再剥離性が高く、時間が経っても被着体から糊残りなく剥がすことができます。
  • 外的要因による依存性が低い
    温度や剥離速度による粘着力の変化が少ないです。常温付近では粘着剤の硬さが変化しにくいため、粘着力の変化が少なく、安定しています。
  • 透湿性が高い
    水蒸気を通しやすいなど、透湿性が高いため、皮膚に貼った際の不快感が低減します。
  • 高固形分化しやすい
    分子量が比較的小さいため、有効成分比率を高くしやすいです。

注意点

  • 粘着力・タックが低い
    一般的に粘着力・タックが低いため、被着体への強い貼りつきが必要な場面や、初期粘着力が必要な場面への使用は難しいことが多いです。また、強粘着力発現のために凝集力や架橋度を調整すると、粘着剤層の強度が低くなってしまい、糊残りが発生してしまう可能性があります。
  • オレフィンへ粘着しにくい
    極性の低い被着体には、貼りつきにくいことが多いです。
  • 高分子量化が難しい
    高分子量化が難しいため、粘着剤の高粘度化など、粘度の調整が難しいことが多いです。また、これにより粘着剤の耐久性が弱くなる可能性があります。

強い粘着力やタックが必要とされる場合、粘着剤の耐久性が必要な場合にはアクリル系粘着剤の使用が推奨されます。

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