粘着剤の基本物性
粘着の3要素
粘着剤の物性評価は、粘着テープの形態に加工し、粘着力 ・ 保持力 ・ タック(べたつき)の3つの評価で表されることが多く、これらは粘着の3要素と言われています。
粘着力とは
粘着力とは被着体(貼りつけた面)から引き剥がすときの力のことで、剥がれにくさを評価します。例えば壁に貼りついたテープを剥がす時、「どれだけの力で剥がれるか?」が粘着力です。剥がしにくいほど粘着力は大きく、被着体にしっかりと貼りついているといえます。粘着力は使用する環境の温湿度、被着体の材質などに大きく影響を受けます。
粘着力測定試験
ステンレスなどの試験板に貼った粘着テープを圧着ローラーで圧着し、一定時間経過後に試験機を用いて粘着テープを180°や90°などで一定速度で引き剥がし測定します。粘着力は「N/mm」や「N/m」で表すことが多いです。mmやmはテープの幅を、N(ニュートン)は力の大きさをそれぞれ表しています。数値が高ければ高いほど、粘着力が高いことを示しています。
保持力とは
保持力とは、被着体(貼りつけ面)と粘着テープのずれにくさです。粘着テープに「一定の荷重(重り)」を「一定時間」かけ続けたとき、ずれた距離を測ることで、ずれへの抵抗性を評価します。例えば、段ボールのふたをテープで閉じたとき、ふたが開く反発力に耐え、開かないようにする力が保持力です。
保持力測定試験
ステンレスなどの試験板に貼った粘着テープを圧着ローラーで圧着し、一定時間経過後に、粘着テープが垂直に垂れ下がるようにし、荷重(重り)をかけます。所定の時間が経過した後、粘着テープがずれた距離、もしくは所定時間経過前にずり落ちてしまった粘着テープについては、落下までの時間でそれぞれ表します。そのため、保持力は「mm」もしくは「分」で表します。数値が0に近いほど保持力が高く、ずれへの抵抗力があることを示しています。
タックとは
被着体(貼りつけ面)に軽く触れた際、短時間で貼りつく力のことです。例えば、セロハンテープなどを指で触った時のべたつきがこれにあたります。タックが強いと、貼りつけてすぐに被着体になじみ、貼りつくことができます。タックの測定方法にはさまざまな種類がありますが、代表的な方法はボールタックです。
タック測定試験
粘着面を露出させた粘着テープを斜面にセットし、ステンレスのボールを転がす方法で、粘着剤面で5秒以上停止したボールの大きさ(No.)で評価します。ボールの大きさが大きくなるほどべたつきが大きいと言えます。ただし、タックはあくまで初期の貼りつき具合なので、必ずしも粘着力の強弱を表すものではありません。
物性の評価は、温度や湿度、被着体の前処理といった試験環境で結果が大きく変わる可能性があります。そのため、試験においては、評価条件を一定とした上で相対的な評価を行なうことや、技能を持った人が評価を行なうことも重要な要素です。
粘着テープに求められる性能は、粘着剤の用途や使用目的などによって異なります。粘着力は強ければいい、保持力はズレなければいい、タックは強いほうがいいというようなものではありません。例えば、スマートフォンの保護フィルムは、軽い力で剥がれなければならないため、粘着力は弱いことが求められます。また、物性評価はご紹介した3物性以外にも多種多様なものがあります。そのため、粘着剤選定にあたっては必要とされる性能に応じた試験を行い、要求水準を満たすものを選択することがポイントです。
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